情報通信研究機構、2025年度中の実用化を目指す
情報通信研究機構(NICT)は、通信データの盗聴や解読を防ぐ次世代型データセンターを、2025年度末までに実用化する方針を発表しました。量子通信技術と秘密分散技術を融合させることで、高度なセキュリティを実現する世界初の取り組みとなります
量子通信で盗聴を検知・遮断
この新たなデータセンターでは、**量子暗号通信(QKD:Quantum Key Distribution)**が中核技術となります。量子の性質を利用して、光子に暗号鍵を乗せて送信。第三者による盗聴が試みられると、光子の状態変化によって即座に異常を検知し、鍵の送信を中断できます。
また、毎回異なる暗号鍵を使用することで、万が一鍵が漏洩しても被害を最小限に抑えられる仕組みです。
医療・金融分野での実証実験も
データは複数の場所に分散して保管されるため、**一部が流出しても全体を復元できない“秘密分散技術”**も採用されます。これにより、量子コンピューターの解読リスクからも保護されます。
同センターでは、2025年度中に医療機関の遺伝情報や金融機関の資産データなど、特に高いセキュリティが求められる分野での運用テストを開始予定です。
全国展開・海外接続も視野に
現在は東京都小金井市を中心とした直径約100km圏内で、大学や企業など20カ所以上を専用回線で結ぶ構想が進行中。将来的には中京、関西圏への展開、さらに2035年までに海外との量子通信網構築も目指します。
また、人工衛星との連携を通じて、通信距離の課題も克服していく方針です。
世界の動きと今後の課題
量子通信はグローバルで競争が激化しており、中国やEUでも大規模な通信網整備が進行中です。一方で、暗号鍵送信装置や専用回線の導入コストの高さが普及への課題とされています。
NICTは今後、民間通信キャリアやデータセンター事業者へ技術移転を進め、量子時代にふさわしいインフラ基盤の商用化を視野に入れています。