業界動向

経産省、量子・AI・バイオなど重点技術を戦略支援へ――          スタートアップ支援や税制優遇も

経済産業省は、量子コンピューター、人工知能(AI)、バイオ技術といった先端技術を「戦略的に重要な技術領域」として特定し、企業や大学の研究開発を重点的に支援する方針を固めた。人材育成から設備投資、スタートアップ支援、ルール形成に至るまで、官民の力を結集した総合的な支援策を展開する構えだ。

これは、経産省が近く公表するイノベーション政策の新方針に盛り込まれるもので、従来の「薄く広い支援」から脱却し、特定分野に資源を集中させる。支援対象となる技術分野は、政府が策定中の2026年度からの「科学技術・イノベーション基本計画」や産業界の意見を踏まえ、量子、AI、バイオのほか、核融合、宇宙関連技術などが想定されている。

研究開発税制を重点分野向けに拡充

経産省は2026年度の税制改正に向けて、研究開発税制の見直し・拡充を要望する予定だ。現在は企業の研究開発費の最大14%を法人税から控除できる制度があるが、特定分野への優遇措置はなく、企業は既存の開発領域にとどまりがちだった。

今後は、量子など重点技術への投資に対して、より手厚い税制優遇措置を導入し、企業の研究開発を特定分野に誘導する狙いがある。

産学連携・スタートアップ支援も強化

人材不足を背景に、国際的に競争力のある大学や研究機関との共同研究も積極的に後押しする。量子研究に強みを持つ大学を「重要拠点」として指定し、企業との連携に税制優遇を広げる案も検討されている。大学への直接的な支援も視野に入れ、将来的な人材育成につなげる。

また、重点技術に取り組むスタートアップに対しては、研究開発費の補助に加え、設備投資や融資時の債務保証といった資金面での支援も強化する。

巨額投資が進む国際競争への対応

第一生命経済研究所の柏村祐主席研究員は、「米国や中国は先端分野に巨額の資金を投じており、他国が追随するのは容易ではない。日本も強みを持つ分野に投資を集中すべきだ」とコメント。その上で、「収益化に向けた支援、特に外国市場への展開や技術輸出のサポートが今後ますます重要になる」と指摘している。

経産省の新たな方針は、グローバルな技術競争が激化する中で、日本の産業競争力を高める一手として注目される。

TOP