業界動向

ニデック、AIデータセンター向け水冷装置を本格量産へ

タイ工場に50億円投資、大型モデルで世界シェア拡大狙う

ニデック株式会社は、人工知能(AI)を活用するデータセンター向けの高効率水冷装置の量産体制を強化しています。2025年4月からは、大型の新型水冷装置の量産を開始し、冷却性能と生産性を両立。拡大するAIサーバー市場に対応し、世界シェアのさらなる拡大を目指します。

タイを中核拠点に、年間50億円規模の設備投資

タイ中部のアユタヤ工場を中心に、配管部品の月産50万個体制を整備。さらに中国・フィリピンの工場でも生産体制を拡充。グループ企業TAKISAWAの工作機械を導入し、高精度なステンレス部品の加工も強化しました。ロボットによる自動化も推進し、生産の安定化と品質向上を図ります。

ニデックによる2024年度の水冷装置関連投資額は約50億円にのぼるとみられています。

冷却能力5倍の大型水冷装置を投入

これまでの小型モデル(40cm×80cm)に加え、2025年4月より縦2m×横1mの大型モデルの量産を開始します。1台で10~20ラック分のAIサーバーを冷却可能で、冷却能力は1000キロワット超と、従来型の5倍以上。

この新型装置はニデック独自開発であり、米スーパー・マイクロ・コンピューターとの共同開発品に続く、汎用性の高い製品として展開予定。他のサーバーメーカーへの供給拡大も視野に入れています。

水冷化が進むAIデータセンター市場

AIデータセンターでは、GPU(画像処理半導体)の発熱が大きく、従来の空冷式に代わり水冷式の採用が急増。ニデックは水冷装置の世界市場において約5割のシェアを有するとされ、2026年3月期には売上倍増を計画しています。

AI市場の成長を追い風に、収益柱へ

プレシデンス・リサーチによると、AIデータセンター市場は2034年に約54兆円(2024年比で3倍)に拡大すると予測。ニデックでは水冷装置やHDDモーター、非常電源などAI関連事業全体で2024年3月期に約2000億円を売り上げており、2031年3月期には7倍以上の1兆5000億円規模に拡大を見込んでいます。

EVからAI分野へ、事業ポートフォリオを再構築

近年、ニデックはEV向け駆動装置「E-Axle」事業に注力してきましたが、中国市場での価格競争を背景に、現在は収益性重視に方針転換。同時に、AI・工作機械分野への注力を強めており、2024年には牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)も発表しました。

執行役員の田中裕司氏は「水冷装置の冷却効率を高めることで、データセンターの管理・運用負担を大幅に軽減できる。今後も販路を広げ、急拡大する市場で確固たる地位を築く」と語っています。

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