業界動向

経産省、量子コンピューターに1000億円投資へ つくばに国際研究拠点を整備

日本政府が量子技術の国家戦略化を本格化。経済産業省は2027年度までに約1000億円を投資し、つくばを量子研究の国際ハブに――。

経産省、量子分野に本腰 つくばの研究拠点を強化

経済産業省は、量子コンピューターの技術開発および産業育成に向けて、2027年度までに総額約1000億円を投資する計画を発表した。投資の中核となるのは、茨城県つくば市の産業技術総合研究所(産総研)に設けられた量子計算の研究拠点で、同施設は2024年春より稼働を開始している。

富士通やIBMも参画 創薬・物流分野での実証進む

研究拠点には、富士通や米スタートアップ企業が開発した量子コンピューターが導入されるほか、IBMと連携した次世代量子技術の開発も予定されている。産総研が提供する量子計算基盤を通じて、企業は創薬、物流最適化、フィンテック分野などでの応用実証を進めやすくなる。

部素材開発で国内企業を後押し 国際競争力を強化

経産省は、量子コンピューターに必要なレーザーや極低温ケーブルなどの光学部品・電子部材の国産化支援にも乗り出す。日本の電子部品メーカーと連携し、輸出競争力の向上と国内技術基盤の強化を狙う。

セキュリティー観点でも量子技術支援を強化

量子技術が進展することで、従来の暗号技術が無効化される可能性がある。インターネット通信の基盤である暗号通信が解読されれば、情報セキュリティに重大なリスクをもたらすことから、安全保障上の観点からも支援が必要とされている。

世界と比べて少ない日本の投資額

主要各国と比べると、日本の量子技術への投資額は相対的に少ない。2023年までの投資総額は以下の通り:

国・地域 投資額(概算)
中国 約150億ドル(約2.3兆円)
英国 約43億ドル
米国 約37億ドル
日本 約7億ドル(約1050億円)

経産省は今後、量子技術を半導体や人工知能(AI)と並ぶ戦略産業と位置づけ、予算の大幅増額を含む支援強化を検討している。

TOP